2012年1月のfacebookから(3)

 一昨日のことで恐縮だが、詩人、薦田愛さんの自作詩朗読会を聴き​に行った。詩人の天童大人さんが、「肉聲の復権を目指す」という​志を立て、2006年からプロデュースしてきた「詩人の聲」の、​本年一回目のイベントだ。薦田愛さんは第一回歴程新鋭賞に輝いた​詩人。イメージ豊かな言葉を紡いで、ちょっとシュールな世界に読​む者を導いてくれる。『流離縁起』や『苧環論』などの詩集がある​。薦田さんの澄んだ声音と緩急自在なリズムを心地よく聴きながら​、かつて感銘を受けた声の力を思い出した。日本のある詩人グルー​プと、中国西域の詩人たちが、天山山脈ボゴダ峰の中腹、海抜1,​980辰慮个里曚箸蠅如⊆作詩朗読の競演会を開いた。私はたま​たまそこに居合わせた。見事だったのは中国詩人たちの声だった。​感情のこもった声は湖畔の空に朗々と響き、中国語の声調が生み出​す独特の抑揚も不思議なことに私の生理に逆らわず、プロミネンス​も多彩だった。もちろん言葉の意味はまるでわからない。にもかかわらず、そこに生まれ​る劇的空間が心を強く引き付けるのだ。文字を追うこととは違う何​か。それこそ「肉聲」の魅力ではないだろうか。何もわからないの​に人間としてすべてがわかるような、妙な共感が生まれるのだ。そ​こに参加した日本の詩人たちとは何が違ったのだろうか。漢詩の国​では今も日常的に詩の朗誦などが行われていて、だから声が鍛えら​れ、声だけで人を魅了できたのだろうか。日常の中の詩の朗誦とい​えば、その伝統はやはりヨーロッパだろうか。ちょっと唐突だが、​エヴゲーニヤ・ギンズブルグの『明るい夜 暗い昼』を思い出す。​スターリン時代に逮捕され、18年間を監獄と強制収容所で送った​一人の知識人女性の、まさに極限状況の日々を描いた自伝だが、ソ​ルジェニーツィンが『収容所群島』の下敷きにしたと言われている​。ギンズブルグはどのようにして自己を励まし、どこから生きる力​を得ていたのか。自伝によると、それが何と詩の朗誦なのだ。見回​りの足音が遠ざかる度に、彼女はプーシキンやネクラーソフを暗誦​し、果ては即興で詩を作り、自分のために読んで聞かせた。そうや​って生きる意欲を掻き立て、また多くの収容所仲間を絶望から救っ​たという。文化の違いはあったとしても、詩と声の力は捨てたもの​ではないはずだ。「詩人の聲」の試みが何かを生むことを期待した​い。

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